人間らしい最期とは、どのような過ごし方でしょうか?死を迎える場所は、住み慣れた自宅だったり療養先の病院だったりするかもしれません。特別養護老人ホームやグループホームでは本人らしく最期を迎えるための「看取り介護」を行っています。このページでは、看取り介護の考え方について理解を深めていきましょう。
看取り介護とは?
看取り介護は、医師から死が避けられないとされている本人がストレスなく、人生の最後を迎えられるように支援する介護をさします。看取り介護には介護報酬の改定により、介護報酬として加算される報酬「介護加算」があります。介護加算の算定条件を参考にして、内容をまとめてみました。
連携した24時間体制の介護
看護職員をはじめとした、病院や診療所、指定訪問看護ステーションいずれかの連携をとりながら24時間体制で看取り介護を行います。介護施設側は、夜中でも医療機関に連絡ができる体制を整えておかなければなりません。
本人と家族へ看取りの説明と同意
看取り介護は、看取りに関する指針を定めて本人や家族の同意をもらいます。病院との違いや対応可能な医療行為の選択肢等について、十分な説明と納得が必要です。意思確認の方法等についても入、所者とその家族と話し合います。
介護計画の見直しやケアカンファレンスの開催
看取り介護について、定期的に見直しをします。医師や看護職員、ケアマネージャーなどが協働してケアカンファレンスを開催。本人が充実した日々を過ごせるよう、支援できることを話し合います。看取り介護計画は週に1回は見直しが求められています。
看取り介護の研修をする
看取り介護を行う従事者は、研修を受ける必要があります。生きることの意味や死に逝くことについて、看取り介護の考え方、本人と家族とのコミュニケーションなどを学びます。その他身体機能低下のプロセスと変化や夜間、緊急時の対応も研修内容として想定しておきましょう。
個室または静養室を用意
看取り介護は個室か静養室の利用を求められます。家族と本人が周囲を気にせず過ごしたり付き添いをしたりできるように、配慮するためです。できるだけストレスのかからないように、部屋の温度や喚起、採光など環境設備も整えます。
看取り介護は、要看護者やその家族のストレスや苦痛を緩和するための介護です。看取り介護の条件を満たすためには介護職員への負担も大きく、知識や豊富な経験が求められるでしょう。
看取り介護の流れ
要看護者が施設に入所し、看取り介護の流れを解説します。大きく分けて4ステップです。
入所・適応期
まずは施設の生活に慣れてもらう時期です。身体や精神状態の安定をしてもらいます。
安定期
今後の可能性を模索したり挑戦したりするステップです。希望や意向に変わりないかを確認し、精神状態の安定を図ります。
低下期
普段の生活と異なる身体兆候がでたり、原疾患が進行したりと回復が見込めない健康状態になります。本人や家族に覚悟をしてもらい、最期の望みを叶えるチャンス期間です。看取り期の判断をします。
看取り期
本人の身体的な衰弱と共に、意識レベルが低下します。介護する家族のケアや死の迎え方に関する希望を確認するステップです。死を迎えたその後の死亡確認や医師への連絡をします。
看取り介護の流れは以上です。死の話題をはぐらかすことなく、家族と本人が共に残された時間を過ごすために支援をする、看取り介護は日常生活のケアの延長線上だと考えて良いでしょう。
看取り介護における介護職員の役割とは
看取り介護の流れにおける、介護職員の主な役割を見ていきましょう。
栄養と水分補給
入所者の食べたい時や飲みたい時応じて、栄養補給をサポートします。健康のために栄養をどんどんとってほしい気持ちになりがちですが、看取り介護では利用者さんの意向で食べてもらうのがベストです。看取り期の入所者は嚥下機能や体力が低下しているので無理のないよう、食事を提供しましょう。
人間らしく清潔に過ごすためのサポート
入浴したり清拭を行ったり、身体状況を清潔に保ちます。入浴が難しい場合は、手浴や足浴を行います。洗髪や朝晩の洗顔、歯磨きなども対象です。人間らしく清潔保持のケアを心がけます。
適切な排泄ケアをサポート
排泄は入所者の健康状態を知る情報になります。排泄の回数や状態を観察し記録します。排泄物の量や状態では医師に相談したり、衰弱が進み排泄物が滞っていたら腹部のマッサージをしてあげたりします。1人ひとりにあった排泄ケアを心がけます。
苦痛の緩和
終末期になると全身のだるさや発熱など、身体的苦痛があらわれます。身体の苦痛に伴い死への恐怖も感じるため、身体的・精神的にもケアが必要です。楽な体位がとれるように援助をしたり、血液循環をよくするため足先を温めたりします。精神的な面だと手を握ったり体をさすったりと、スキンシップがあると心強いです。
家族への対応
利用者さんの状況や介護内容をご家族の方にこまめに報告します。家族の希望や意向を取り入れて、できるかぎり希望を叶える支援をします。危篤・臨終時には、本人に声をかけたり身体をさすったりするアドバイスをするのも介護職員の役割です。家族によって、利用者さんに優しい態度をとれない方もいますが、どんな精神状態にあっても理解を示し、見守ります。
ご臨終を確認した後は、医師の死亡宣告を受け死亡診断書を受け取り、葬儀社によって遺体の搬送という流れになります。
介護施設で亡くなった場合の葬儀について
高齢化や核家族の増加により看取り介護を選択し、介護施設にて最期を送る方は増えてきました。施設によって死の直後に行う処置、エンゼルケアの有無は分かれます。介護施設が行わない場合は、葬儀社への処置を依頼します。
葬儀会社がまだ決まっていない場合は、施設から紹介を受けられるでしょう。しかし、家族や故人の希望に沿ったものではないかもしれません。他の利用者に配慮が必要なため、できるだけ早く遺体を安置先へ搬送する必要があります。葬儀会社の選択は、看取り介護を選択した時点で事前に考えておきたいものです。
葬儀の準備について
人生の最期に備える「終活」という取り組みは、一般化してきました。同時に生きている時に葬儀の契約する、生前契約への関心も高まっています。
生前契約のメリットは、儀式の形式や規模、会場など本人の希望を叶えられるところです。家族と話し合ってじっくり決められるメリットもあるでしょう。葬儀に呼ぶ方や死亡を伝えたくない人、流す音楽など細かい計画が立てられます。
葬儀の費用に関しても、急な出費を避けられるので残された家族にも迷惑がかかりません。生前契約の場合、契約時の支払いや前払い、後払いが可能です。葬儀信託を利用して葬儀後に精算を済ませる方法もあります。葬儀信託の場合は契約業者が倒産しても、金融機関に信託財産として預けるためお金が戻ってこないという心配がありません。葬儀会社を選ぶ時に、葬儀信託の取り扱いがあるかも確認しておくといいでしょう。
看取り介護は、要介護者に最期までその人らしくいてもらうための配慮が必要です。介護の仕事をしている人や家族を介護している人は、看取り介護の考え方を深め本人と残りの人生を充実したものにしていきましょう。また、看取り介護が必要でない元気なうちに、自分や死と向き合い家族も含めて終活に取り組む計画をしてみてはいかがでしょうか。