ボディメカニクスについて
職業として介護を行うときに非常に重要になってくるのが「ボディメカニクス」です。
あまり聞き慣れない言葉ですので、もしかしたら介護ロボットのようなものと思うかもしれませんが、これは人の力を効率的に使って行う介護技術のことです。
介護を日常的に行っている人の多くが発症しているのが腰痛で、これは介護活動を行うときに体を移動させる時の力仕事が原因になっています。
この腰痛がひどくなると介護活動を続けることが難しくなるばかりか、介護を行う人自身の生活にも悪影響が及ぼされてしまうことから、本格的な介護に入る前に身に着けておくべき技術と言えるでしょう。
なぜ介護の現場でボディメカニクスのような技術が必要になるかというと、介護を受ける高齢者は体の自由がききにくいためです。
例えば体の向きを変えたり起き上がったりするときに、介助をする人に合わせて姿勢を取ることがなかなかできません。
けが人であったり子供であったりする時には、支える人の体の動きに合わせて姿勢を変化させることができるのですが、高齢者ではそれがままならないことにより、通常よりも介助をする人に重量負担が多くかかることになります。
介護を初めて行う人が戸惑うのもそうしたところで、少し体を動かそうとしただけで腰に大きな負担がかかってしまうことに驚くものでしょう。
ボディメカニクスをマスターすることは介護をする側の人を守るだけでなく、速やかに体の移動をすることができることにより、介護を受ける側にとっても大きなメリットがあるのです。
移動介助の基本とポイント
ボディメカニクスの基本となっているのは7つの原則で、これを最初に覚えることにより、想定外の動作が必要になったときにも対応が可能になります。
1.支持基底面積をできるだけ多くとる
2.利用者と介護をする人の重心をできるだけ同じ位置にする
3.体の中でも筋肉が多く集まる場所を中心に使って動かす
4.利用者の体を動かす時にはできるだけ小さくまとめる
5.利用者に対して「押す」のではなく「引く」動作を多く行う
6.利用者を動かす時には介護者の重心移動を優先させる
7.体をねじる動作をせずに肩と腰を水平なまま動かす
実際にこのボディメカニクスをやってみて特に利用頻度が高い項目としては「体の大きな筋肉を使う」ということと、「体をねじらないようにする」ということです。
「体の大きな筋肉」というのは具体的には足や腰など体の中心に近い筋肉のことで、悪い例での介護では手先や指先だけで利用者の体を動かそうとしてしまうでしょう。
寝たきりの利用者の寝返りをするときなどでは、慣れないとどうしても腕や手先だけで体を動かそうとしてしまうので、力が分散してなかなか体勢を変化させることができません。